
雇用主限定の就労ビザ申請
ジョブオファー内容の審査が厳格化されました
2026年9月17日、カナダ移民局(IRCC)は雇用主限定の就労ビザ(Employer-Specific Work Permit)の審査において、ジョブオファーの「真正性(Genuineness)」をより厳密に検証するための審査マニュアルを改定しました。
出典1:IRCCアップデート
出典2:インストラクション
また、2026年9月18日、カナダ社会開発省(ESDC)は、LMIAのプログラム要件(Program Requirements)のページに「Employer」の項目を加筆し、雇用主(Employer)の定義が明確化されました。
出典3:LMIA Program Requirements
審査官が検証する「4つの真正性要素」
新しい審査マニュアルに基づき、審査官は以下の4つの要素を満たしているかを厳格に確認するとみられます。要件を十分に証明できない場合、申請が不許可となる可能性が高まることが予想されます。
1. 事業の活発な運営(Active Engagement)
雇用主が法律に基づいて実在し、カナダ国内で実際に事業(物品やサービスの提供)を行っているかが改めて問われると考えられます。
- 確認書類の例: CRA(カナダ歳入庁)のビジネスナンバー、ビジネスライセンス、決算書、事務所の賃貸契約書など。
2. 合理的な雇用の必要性(Reasonable Employment Need)
そのポジションが、企業規模や事業内容に対して「本当に必要なのか」がより精査される見通しです。
- 特定の申請ストリーム(Express EntryやHigh-Wage LMIAなど)の条件を満たすために、事業規模にそぐわない高位の役職や高額なオファー時給額が設定されていないかなどが確認対象になるとみられます。
3. オファー条件の履行能力(Ability to Fulfill Terms)
雇用主が、申請者に提示した給与・労働時間・福利厚生などの条件をビザの全期間にわたって確実に履行できる資金力や体制を有しているかがチェックされると考えられます。
- 確認書類の例: 給与関連書類(T4 Summary、PD7A等)、法人税関連書類(T2等)
4. 労働法・採用関連法の遵守(Compliance with Laws)
雇用主および求人エージェント(Recruiter)が、連邦法および州の労働基準法や人材紹介業法を遵守しているかが精査される見込みです。
- 求人エージェントにライセンス登録が必要な州で無許可のエージェントを利用している場合や、違法な採用手数料(Recruitment Fees)の徴収が疑われる場合では、申請が却下される可能性が高いとみられます。
人材派遣会社や個人事業主へのESDC要件の追加
今回のIRCCのマニュアル改定ならびにESDCの「LMIAプログラム要件におけるEmployer項目の加筆」では、労働者保護と労働市場の正常化を目的として、以下のような審査方針および企業要件が明確化されました。
- ESDCのEmployer(雇用主)要件の明確化: ESDCのLMIA Program Requirementsにおいて、雇用主にビジネスの実態があること、従業員との間に指示命令関係があることなど、雇用主の要件が明確化されました。
- 人材派遣会社による雇用の制限: 他社へ派遣・配置する目的で人材派遣会社が従業員と結ぶ雇用契約はTFWプログラムでは有効なジョブオファーとは認められないことが明確化されました。
- 個人事業主(Independent Contractor)への偽装防止: 実態が直接雇用の関係であるにもかかわらず、雇用主が税金や手当の負担を免れる目的で個人事業主(Contractor)として契約を偽装されたものは、有効なジョブオファーとして認められないことが明確化されました。直接雇用のジョブオファーを基に申請した就労ビザが承認された後、個人事業主としての契約に改めることも認められません。
実務上の影響と注意点
今回のIRCCのマニュアル改定及びESDCのEmployer定義明確化で、就労ビザやLMIA申請時の必須書類そのものが大きく変更されたわけではありません。
たとえば、就労ビザ申請での、LMIAが必要なケースではLMIA承認レター、LMIA免除の場合のEmployer Portal番号 (Aナンバー) など、これまで必要だった書類は引き続き重要です。
一方で、今後は、審査官がジョブオファーの真正性に疑問を持った場合、会社の財務・税務・給与関連書類などの追加提出を求められる可能性があります。従って、追加書類を求められた場合に備え、ジョブオファーの真正性を証明する書類を準備しておくことが重要です。
なお、このジョブオファーに対する審査基準は、カナダ入国時(Port of Entry、POE)での審査にも適用されます。POEでの就労ビザ申請の際は、提出を求められる可能性のある書類を出来るだけ持参して申請に臨むことが重要です。
